たどる

椎の枝先のカラスが、羽を広げたりくちばしで突いたりして、毛づくろいをしているのを部屋から眺めていた。カラスの濡れ羽色とはよく言ったもので、黒い羽はツヤツヤと輝いている。
変なことを思い出した。子供の頃、近くの大人から髪の毛をよく誉められた。器量の悪いわたしには他に誉める所がなかったのだろう。三年生なの?体格がいいね、量が多くていい髪の毛だねぇ。上から下へ下から上へ視線を移動しながら口だけ微笑んだ大人が言った。今はその髪の毛も細く腰もなく、こんもりとしていたおかっぱ頭も何処へという感である。

ちょうどその頃、カラスに頭を突かれたことがある。大和屋の縁側で縦笛(今はリコーダーと言うらしい)を練習していた時、ブロック塀に二羽のカラスが止まっていた。このカラスたちは近所の人が飼っている、しゃべるカラスだった。しゃべると言っても九官鳥ほどではなく、飼い主の言葉のいくつかを少しだけ覚えてしまったいう程度だったと思う。
まだうまく吹けない笛をバカにされているとでも思ったのか、わたしはひとしきり指を動かして息が苦しくなると、そのカラスたちに汚い言葉を発したのだろう。相手が子供と見たのか、わたしの言葉がわかったのか。カラスに頭のてっぺんを突かれ、母に連れられ近くの医院で治療して貰った。あの時の、頭に食い込んだ爪の鋭さと頭を押さえて医院に歩く姿を学級委員長の同級生に見られたことを今もよく覚えている。不思議そうに何したのと聞いたコウサク君はきっとりっぱな人になっているだろうなとも。

こう考えてみると、子供の頃、動物や虫に襲われたことが結構あったなと思う。友達の家で牛に追いかけられて大騒ぎで山まで逃げたこと。その後ご馳走になった蒸かした里芋がおいしかったこと。ラジオ体操の後、ホウセンカの花にクマンバチを閉じ込めて刺されたこと。天井からヤマカカが落ちてきたこともハガチ(ムカデ)に刺されたこともあった。ここまで書いて思い出した。一番最初の災難は、六歳の頃か、女将さんが飼っていたニホンザルにオシッコをされたことだ。チイチャンはヒョイヒョイとわたしの肩から頭に移動すると放尿。そばに居た大人たちはアンタの赤いカーディガンが欲しかったからだと大笑いし、わたしは大泣きしたのだ。しばらくして冬を越せなかったチイチャンは、大好きだったわたしの赤いカーディガンに包まれて旅館の裏山に葬られた。
今、仏壇に置かれた写真には、白い割烹着姿の母に抱かれた飼い猫と隣りにはそのチイチャンの姿が写っている。
記憶の遠く、わたしの記憶もモノクロになってきている。

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