慌しく

昨夜の熱発を不安に感じたのは、仕事への影響ではなく、風邪で体調が悪いのに外来受診

に行かなくてならないのかと気が重くなったからだった。行って帰ってくるまで5時間を覚悟し

なくてはならず、診察までの待ち時間を思うと、椅子はなし、寄りかかる壁もなしでどうしようか 

と思ったのである。夜になって、相棒から娘が風邪で熱を出しているので明日の仕事はどうな
 
るのか分からないとメールが入る。この時期、子供を持つ親には仕方のない事情であるので

明日は忙しくなるかもしれないと覚悟を決め、風邪薬と痛み止めを飲んで早めに就寝した。

 オープン準備時から一ヶ月半の間、何がなんだか分からないまま、相棒と二人で悩みなが

ら仕事を教えて貰いメモに取り、家に帰ってからも今日の仕事内容を思い出しながらメモを見

る日が続いた。作業に有ったら便利な道具をそれぞれが自前で用意し、未熟な段取りを少し

でも改善できるように各自の担当を割り振りしてやってきた。一月の中旬になって、新しい人

たちが入ってきたので少しは楽になると思ったのだが、何か違う。今どきの若いお嬢さんは見

掛けによらず器用で、教えるとハイ、ハイとこなし、不信に思うとしっかりと質問をしてくるのだ

が、なぜだろう主婦の方は仕事に対しての気構えが見えない。メモを取るのも若いお嬢さん

たちであり、主婦の方は言われないとメモを出す様子もない。

ショックだったのは初日に言われた『何をお手伝いしましょう?』であり『手が空いてますが・・』

の言葉だった。ボランティアで来てるのかしらとヘソが曲がってしまったのは、わたしの意地

が悪いからだろうか。狭い了見だからだろうか。

『何をやりますか』 『教えて下さい』。わたしだったらそう言うだろうし、今までそうしてきた。

 人は皆自分と同じではない。これからの事を思えば、繰り返し教え、実際にやって貰って覚

えて貰うしかないと短気を起こすまいと肝に銘じて一週間。主婦①の彼女は書いたというメモ

を見る事もなく今日もまた失敗した。

 わたしと彼女の立場は同じである。一ヵ月半の差はあるものの、わたしにも今やっている作

業があり先の段取りもある。彼女のアシストの為に余計な神経を遣わなくてならないのはかな

りの負担であり、相手がそういう事に気づいてくれるなら良いのだが、その気配は一切ない。

今日はさすがの相棒も見かねて、彼女に一言、言っていたが、なんの風でもなかった。

 昨夜の用心が良かったのか、熱発は風邪には発展せず、相棒は娘をお義母さんにお願い

してきて出勤だったので今日の仕事は普段よりも早く無事に終了できた。

 帰宅して家事をしていても、苦い思いが胸に残っていた。

自分の彼女に対して発した言葉である。わたしの「肝に銘じて」は、気短な性格から一瞬消え

てしまう事が多々あり、言わなくても良い事まで言ってしまう事がある。

『失敗してから言われても困るわ、考えれば分かるでしょ主婦なんだから』。立て板に水、完

全言い切り型。相棒はこんなふうには言わないし、違う応対をするだろう。言った本人がそう

感じるのだから、言われた側はもっときつく感じただろう。家に帰ればちゃんと主婦をこなして

いる人なのだから。そんな思いの反面、仕事ってのはそんなに甘いもんじゃないわ、わたし達

はこの一ヵ月半の間、もっと辛い思いをしてきたのだからと思ったのも本当のところ。

 しかし、まだまだわたしも半人前。偉そうに語らないで謙虚に仕事を覚えていきたい。